ナイトレミーラ


『苗』


何処かから僅かに響いてくるサーキュレーター音以外、無音と完全な無菌状態が保たれている事を伺わせる閉鎖ケイジは、そのアイボリー系が多くを占める壁面色彩とは裏腹な禍々しさを見る者に感じさせずにはおれず、まさに檻と呼ぶに相応しいものだった。
今その中央部には、近代的な医療施設を思わせるケイジにはいささかそぐわない中世欧州の騎士的な雰囲気の、だがシックな芸術性と神秘性を強く漂わせる翡翠色の衣を纏うプラチナブロンドの美少女が四肢を鎖で固定され、スラリとした右脚を膝部から釣り下げられた淫靡とも呼べる姿で拘束されていた。
右胸、股間…… 所々を切り裂かれ、何本ものチューブやケーブル類がまとわりつき、データ測定機器用と思しき電極パーツを張り付けられたエメラルドの戦衣を纏う美少女騎士は、その軽くはない負担を強いる屈辱的な拘束姿を強制されながらも呻き声一つ上げず、時折浅い呼吸の様子を見せるのみ。
既にこの研究ラボらしき施設に連れ込まれて60時間は経過しているだろう。

『ほほう…… 既に体内の血液を四分の一は抜かれているにも拘らず、未だ意識とナイトフォルムを保ち続けるとは、データ通り華奢な外見に似合わぬ大した精神力と強靱性だな、ナイトレミーラ…… 』

「うっ…… くうぅぅ!? あ、あなた達は何者ですっ…… 何が目的で私をっ!」

前触れも無く何処かに設置されたスピーカー越しにケイジ内に反響する無機質で性別すらも定かではないが、明らかな悪意と嘲弄を濃厚に含んだ声を浴びせてくる姿無き敵に向け、レミーラは瞬時に目覚めた様に俯いていた顔をキッと上げ、怒りと抵抗の意志を込めながら凛とした声音を放つ。
だが、彼女の端正な顔立ちからは血の気は消え失せ本物のフランス人形の如く蒼白い雪肌には脂汗が浮かび、間断なく目眩に襲われている様に言葉も所々が途切れる。

『既に察しているだろう? 貴様らフェアリッシュナイツは忌々しき邪魔者…… だが、こうして運良く貴様という極上のモルモットが手に入った…… FKの能力、そして弱点…… 尽く暴いてくれる…… 協力してもらうぞナイトレミーラ? くくく!!』

「何をふざけた事を!? わたしはけ、決して貴方に協力などしません!!」

FKのメンバーが持つ神秘の能力を探る研究資料の収集と抵抗力を奪う事を兼ねてだろう、容赦なく打ち込まれた何本もの採血チューブによって、常人ならばとうに意識が朦朧となっている筈の量の血液を抜き取られてなおレミーラは気丈に反駁を重ねる。

『貴様の意志などは関係ない…… 精々、為す術も無く己の能力…… そして貴様等が纏うフェアリッシュドレスのポテンシャル数値を我々に差し出すがいい…… くくく…… 』

「お、おのれ…… その様な真似、ゆ、許しはしな…… っ!?」

更なる反駁を重ねようとするレミーラの唇から不意に涼やかな調べが途切れた。
既に自らの纏う聖霊騎士の防具…… フェアリッシュドレスを容易く切り裂かれ、体内に幾本ものニードルを打ち込まれてしまっている。
薄手の生地と軽量な鎧の組み合わせに過ぎない様に見える彼女達のコスチュームだが、ダイヤにも匹敵する超硬度と驚異的な高速再生能力を持つ神秘の繊維を守護聖霊力の防護フィールドで覆うフェアリッシュドレスは、肌が露出している様に見える部分も含め、全身を相当に高レベルのイレギュラーからの多様な攻撃をも防ぎ通す。
こんな真似は簡単に出来ない。
ただし、その驚異の能力は聖霊力の強さと釣り合う高度な制御能力を必要とし、それは聖霊と一種の契約を交わした着装者の心身コンディションに大きく左右される。

『許すか否か…… 正確な解答は貴様も心得ているだろう。綺麗な乳首と下のお口を丸出しにした『地』の聖霊騎士ナイトレミーラ? それに、我々の招待を受ける前から随分と体調も悪かったそうだな…… 』

プラチナブロンドの美少女聖霊騎士の心理を読んだ様に含み笑いを散りばめた声が追い討ちをかける。

(何故…… その事を!? こいつは一体…… )

声の主の言葉通り、一ヶ月余り前の東北山中で数百年に渡り人食いの魔樹として怖れられてきた超大型の危険度Aクラスの植物型イレギュラー(異界出自のモンスター類)であるコードネーム『ブリード』とその眷属達を処理した折に受けた苛烈な肉体ダメージからレミーラは未だ完全な回復を果たしてはいなかった。
今の彼女はナイトフォルムに変身してはいても、その能力は聖霊力の暴走を防ぎドレス着装者の肉体保護を目的とした、いわばセイフティモードでの稼動に等しい。
だが、その事実は極秘事項でありフェアリッシュナイツ——— 初音降魔衆の機密保持は万全の筈だ。

『ククク…… そういえば楽しませてもらったぞナイトレミーラ。この前の貴様の真っ昼間の山の中でのあられもないショーの一部始終をな? 可愛い顔に似合わず女三人とバケモノツタを同時に相手とは、中々の好き者なのだな』

「……………… 下衆め!」

羞恥と怒りで血の気の失せた頬に僅かに朱を浮かべながらレミーラは吐き捨てる。
記憶の一隅に刻み込まれ、疼き続ける苦い屈辱が蘇る。

『 そう恥ずかしがる事もあるまい。偶然だったよあれはな。我々にとっても脅威になるやもしれぬブリードを監視する為のカメラの一台が貴様の「アレ」を撮影していたのだ…… それだけだナイトレミーラ、フフフ…… さて、無駄話はこれぐらいにするとしよう』

「!?」

一旦途切れた声に代わり、レミーラの傍らの床板が一カ所ぽっかりと開き、何か円筒状の物体がせり上がってくる。

『あの時、貴様が見せた淫ら極まるウィークポイントは貴様に限っての事なのか、それともFKのメンバーに共通する何らかのファクターが有っての事なのか…… その検証だナイトレミーラ』

「こ、これはっ…… !? まさかっ!!?!」

床下から出現した円筒形の透明容器の中で正体不明の液体に浸かった、暗緑色の巨大なイトミミズの塊の様な物体を貧血が進行し霞みが悪化した視界が捉えた瞬間、背筋の冷気は絶対零度のブリザードと化してレミーラの心臓を凍らせた。
その醜い巨大イトミミズの正体は、あのブリードの眷属であり、自分に決して忘れ得ぬおぞましい記憶を刻み付けてくれた『封印樹』の一部……

『ふふふ…… お馴染みのお友達だろう? 何しろ貴様のケツ穴からあんな汚らしいモノを吸い出して…… 』

「や、やめてぇ!? 言わないでええぇぇぇええエエエッッッ――――ッッッ!? きゃああっ!!? だっ、やめ、えぇええぇっ!? ああああぁぁぁッッ~~~ッッッ!!!! そ、それはああぁアアアッッッ~~~ッッッ!!? 」

あの最大級の恥辱の記憶を弄ばんとする声に、冷静沈着なレミーラの心が一瞬コントロールを喪った刹那、それまで足元でピクリとも動かなかったマシンアームが毒蛇の鎌首の如く持ち上がる。そしてその先端の3本の鉄爪ががっしりとワシ掴んでいるのは、レミーラのスレンダーな肢体外郭を護る翡翠色のケープ。
彼女の力の源である大地の聖霊力を織り込まれた強靭で滑らかな楯布が、ボディスーツ股間部を刳り貫かれ無防備に外気に晒された秘裂に喰い込まんばかりに激しく扱き上げてくる。

「くふあああ、ああっ、はぁぅっ、い、いや、いやです…… そこ、そこは…… それはぁ!? はぁあ、あぁぁん、ぁあんん〜〜っっ!!?」

数十日前、ブリードの種子を植え付けられ、邪悪な支配下に置かれた闇巫女の戦士達に浴びた余りにも甘美で屈辱的な責めが、あの折よりも悪化した状況下で襲いかかってくる。
どれほど理性が塞き止めようとしても、易々とその堤防を決壊させ流れ込んでくる煮えたぎった劣情の土石流にもっともデリケートな部位を蹂躙され、レミーラはあの山中の処刑場の時と同じく肉人形同然に愛蜜を滴らせながらよがり、
喘ぎ叫ぶしかなかった。

「あふぁぁぁあぁっ……トロける……や…めて……や……めへぇ……ひぁあぁ!? あああっああっ、くぅぅっ、はぁぅう〜〜っっっ!!?」

美しき大地の聖霊騎士は、自らの戦衣に劣情地獄へと繋がれ為す術も無くケイジの中で身悶え、ボディスーツやケープ、胸のコアクリスタルに絡み付いたセンサー類が一瞬の変化も見逃さずあらゆるデータを吸い取ってゆく。

『下の口で噛み締める自分のケープの味はどうだナイトレミーラ? どうやら聖霊力が他の神経束同様に性感帯を活性化・鋭敏化させる効果が有るようだが、後ほどじっくり解析させてもらおう。充分に股座が湿ったところで、たっぷりとそいつと乳繰り合っているがいい。そう…… これからほんの48時間ほどな…… クク…クククク…… 』

唐突に声が途切れるのと同時、円筒容器の上蓋ロックが圧搾空気の抜ける音と共に解除され、分厚い金属フタ部分を跳ね上げる様に妖樹の苗木群が飛び出してくる。
妖樹苗達はレミーラの股間から否応無く滴る愛蜜の香りに誘われる様にして、次々にレミーラの下半身に絡み付き、醜悪な先端部を股間のクレヴァス内部に突き入れようとうねりながら群がってくる。

「ひ、卑怯者…っ…どこまで…私をっ 辱めればっ… いやぁっ、いやああああぁっ!? くああっ、あっ、熱いっ、ひいっ、ひやあああああぁ〜〜〜〜っっっ!?!」

邪悪な再会劇に用意された淫らな歓喜にうち震えているかの如く、妖樹の苗木…… あるいは触手とでも呼ぶべき闇の森の幼子達は大地の聖霊騎士の肉体と内に秘めた聖霊エナジーコア…… 極上の苗床を貪り成長を遂げるべく蠕動を繰り返していた。

—FIN—


草宗さんとの合作終了後に交わしたメール中で出たSADのオリジナルヒロインであるナイトレミーラの凌辱系CG。
シチュとしては上のテキスト通り、ブリード事件以前にFK(=フェアリッシュ・ナイツ)に幾度となく煮え湯を飲まされていた悪の組織がブリード事件のダメージが癒えきらないレミーラを罠にかけて拉致し、その能力の秘密を暴くべく生体実験にかける…… というありがちな気がするが意外と無いような気もするシチュエーション。
何となくテキストも凝ってしまったが、上で登場する敵の正体に関して決まっている設定はただ一つ『秘密シンジケートS・W・Y』という名称のみだったりする。
ちなみにS・W・Yとは『SUGOKU・WARUI・YATSURA』の略であるw

今回は今までに余り使っていなかったPainterをメインにアナログっぽい仕上げに挑戦。
更に仮想構築したWin環境も跨いで線画も普段のコミスタに加えAzDrawingも多用して、色々と技法的な実験要素も濃い一枚。
しかし、あの合作ではメイン登場キャラの中で一番影が薄かった気がするんですが、何故か頂いた感想類ではレミーラが一番人気を獲得……
う〜〜む、何故なんだろう?(笑)